さて今回は、インド映画「こちらピープリー村/Peepli [Live]」。
2010年公開製作された、95分の社会問題に迫るヒューマンドラマ作品です。
とはいえ、暗いだけのシリアスドラマじゃなく、「くすっ」と笑っちゃう、そこはかとない庶民の悲哀が感じられるコメディでもあります。そうコメディなんだけど、ペーソス感じちゃう。
アーミルの作品、私の好きなナワーズッディーンさんの出演している作品なのです。
あらすじ、感想など、書いていきたいと思います。
では、どうぞー。
『こちらピープリー村/Peepli [Live]』okome のヒトコト感想&勝手におすすめ度
政治もマスコミも なんやねん 何もできない庶民悲しすぎる
「勝手におすすめ度」★★★☆☆(意外にヤギがいい演技をします)
『こちらピープリー村/Peepli [Live]』監督&キャスト
監督
・アヌーシャ・リズヴィ
キャスト
・オムカル・ダス・マニクプリ
・ラジュヴィール・ヤダヴ
・ナワーズッディーン・シッディーキー
・マライカ・シエノイ
・ナセールディン・シャー
・シーターラーム・パンチャール
・シャリニー・ヴァツサ
・ファルク・ジャーファル
・アーミル・バシル
・ヴィシャール・オム・プラカーシュ
「こちらピープリー村/Peepli [Live]」インド映画あらすじ
ムクヤ・プラデーシュ州のピープリー村の住む、ブディヤとナッターの兄弟。銀行から、借金が返せないのであれば担保の農地を競売にかける、と言われてしまう。
唯一の頼みの綱、地域の有力者であるサンマン党のタークルに相談に行くが、選挙運動中で、相手にされない。が、取り巻きの部下であるグッダから「政府の新制度ができて、借金を苦にして自殺した農民に10万ルピーの補償金が出る」という情報を聞く。ナッター曰く「死の特売日のよう」に村では人が自殺して死んでいく状況で、ブディヤとナッター兄弟はどちらかが死んで補償金を得よう、という話になる。
そんな中、地元新聞社ジャンモルチャ社の記者であるラケーシュが、ナッターが自殺するという情報をつかみそれを記事にするが、それを見た県長官が激怒する。そしてナッター自殺が大きなニュースになり視聴率が取れると踏んだ大手テレビ局ナンディータ・マリクはじめマスコミ各社が大挙して村に押し寄せ、タークル、州首相ラムヤーダブ、後進カースト党ノパップーラルなどを巻き込み大騒動になる。
ナッターは本当に自殺するのか?補償金がもらえるのか?
「こちらピープリー村/Peepli [Live]」インド映画見どころ、感想、ネタバレあり!
「こちらピープリー村/Peepli [Live]」インド映画 佐藤蛾次郎似ナッター役のオムカル・ダス・マニクプリ
主人公ナッター役のオムカル・ダス・マニクプリ ですが、「どっかで見た気がする。。。」という妙な既視感がありまして。
しばらく考えて思い出しました、日本映画「寅さん」に出てくる寺男・源吉(愛称:源公)役の佐藤蛾次郎さん!身長、もしゃもしゃの髪型、愛嬌のある憎めない風貌、ホントに似てるんです。
この映画は、借金で苦しむ庶民の姿を描いた社会的ヒューマンドラマですが、「お涙頂戴」にならないのは、ちょこちょこ出てくる兄ブディアと弟ナッターの掛け合いやナッターの愛嬌ある演技だったりします。
ナッター役のオムカル・ダス・マニクプリはボリウッド出身ではなく、地方演劇出身の演劇人。「こちらピープリー村/Peepli [Live]」での演技が評価されて、コメディ「バンパードローBumper Draw(2015年)」、コメディ「Gaon(原題)(2018年)」の作品に出演しているそうです。
「Gaon」は、世間と隔絶された原始的生活をするインドの村に大都会に住む銀行マンがひょんなことから移り住み、急激に現代の資本主義的価値観が持ち込まれて混乱するコメディらしいです。オムカルさんは少なくとも銀行マンじゃないですね笑。自然な村人の演技なんだろうなあ、と想像できちゃいます。
多様なインド社会を描くには色々な俳優さんが必要。
この「こちらピープリー村/Peepli [Live]」でも、「ほんとはここに住んでるんじゃないか?」「彼らは俳優さんなの?村人じゃないの?」というくらい自然な村人として溶け込んだ演技をする人ばかり。特におばあちゃんとかおじいちゃん。
いつも思うんですが、彼らも演劇人だとしたら、凄いなあ。
「バドワイ村に感謝」みたいなクレジットが流れてたので、その村のエキストラなのかな。
とても真実味を感じられる映画だと思います。
「こちらピープリー村/Peepli [Live]」インド映画 正義の味方ナワーズッディーン・シッディーキー
この映画では、10年前の36才の脂ののったナワーズッディーン・シッディーキーさんの姿が観られます。野心と正義感に燃える大手マスコミ志望の男ラケーシュ。いい役です。
「虚弱な村の男ホーリー・メヘトが農地をとられ、生きるために休閑地の土を掘って一日20ルピーで売っていたこと、その果てに死んだこと、そんな村の窮状を取材するのが重要では?」と正論を投げかけるものの、テレビ局のナンディータに「そんなもの視聴者は興味ない」とばっさりやられ。
そして事故で命を落としてしまう、、、ことがさりげなく。
大手マスコミの前では、抗ってもダメで、「ラケーシュ=正義」が死んじゃってる、という意味なんでしょうか。
だとしたら悲しいですね。。。
本編ではラケーシュが死んだとは言っていません。
ただ、村からナンディータたちが帰るときに「ラケーシュがいないわね」と言っていること、死んだと思われたナッターが実は生きていたこと、死体の手首にトルコ石のブレスレットがあったこと。
映画前半で、ラケーシュが同じブレスレットをしていたのです。
ラケーッシュ…!!涙。
ナワーズさんは下積みが長かった演技派俳優さんですこちらもぜひ。↓↓↓
「こちらピープリー村/Peepli [Live]」インド映画 腐敗した政治、視聴率至上主義騒ぐだけのマスコミ
カーストに格差社会、政治や警察、司法の腐敗。インドの抱える社会的問題点。
色々な映画で数々観てきましたが、この「こちらピープリー村/Peepli [Live]」では初めて、マスコミの在り様を知りました。
何でもこじつけて、話を膨らませて、たいして関係ない人にコメントとって、問題の本質はわかってるくせにそれを流さない。いやー、腐ってます。。。そしてここぞの稼ぎ時とばかりに屋台や大道芸人やサーカスも来ちゃってのお祭り騒ぎ。
要領よく生きるとか、アタマがいいとか、なんなんでしょうね。
ナッターが自分を利用するマスコミや政治家たちから逃げ出し、都会の工事現場の片隅で座り込む。その周りにいる、沢山の「ナッターたち」。
多分、自分たちの村に住むことができなくなった元農民たちなんですよね。無表情で、その目には、感情がなんにも映ってないなあ、、、と思いました。
「無」です。喜びも悲しみも怒りもない。すべて奪われてただ生きている、という印象でした。
映画最後のクレジットに、「1991年~2001年に800万人が農業をやめた」とインドの国勢調査の情報が流れます。祖先から大事に受け継いだ農地を手放さざるを得ない政治経済って何なのでしょうね。。。
警察や司法の腐敗について描いた映画はこちら。なかなか辛辣で、胸が痛くなります。
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「こちらピープリー村/Peepli [Live]」インド映画 アーミル・カーンが製作
この映画は、インドの世界的実力俳優のアーミル・カーンがプロデュースした作品なんです。
アーミル・カーン・プロダクション(Aamir Khan Productions)は、インドのムンバイに拠点を置き、1999年に設立された映画配給会社です。自身が主演を務める『ラガーン』を製作したかったけれど、配給会社が見つからなかったため、奥様のキラン・ラオも交え、会社を設立したそうです。楽しいばかりでなく、社会的問題に切り込んだ映画を作っていきたいという気持ちがあったそう。また映画をより多くの人に見てもらい、情報を届けるためには映画祭で賞をとることも大切、と配給時期も考えているそうです。さすがアーミール!!
主な代表作は以下の通りです。
面白い作品ばかり。いくつかネットフリックスでも観ることができるので是非チェックしてみてください。
この中では、私は「地上の星たち」が一番好きです。もう、感動で泣けました。。。
・Madness in the Desert(2004年)
・地上の星たち(英語版)(2007年)↓↓↓
・君が気づいていなくても(英語版)(2008年)
・こちらピープリー村(英語版)(2010年)
・ムンバイ・ダイアリーズ(2011年)↓↓↓
・デリー・ゲリー(英語版)(2011年)
・Talaash: The Answer Lies Within(2012年)
・ダンガル きっと、つよくなる(2016年)↓↓↓
・シークレット・スーパースター(2017年)
・Rubaru Roshni(2019年)※テレビ映画
・Lal Singh Chadda(2020年)
「こちらピープリー村/Peepli [Live]」インド映画ネットフリックスで見逃しなし!!→配信停止中(2020年12月)
「こちらピープリー村/Peepli [Live]」いかがでしょうか。
インドが抱える社会的問題、政治、司法、マスコミの腐敗に大胆に訴求し「こちらピープリー村/Peepli [Live]」、初めて知ったこともあって、見ごたえがありました。ということで映画「こちらピープリー村/Peepli [Live]」、★★★3つとさせていただきます!
※2020年12月、ネットフリックス配信が停止してしまいました。いい作品なので復活してほしいですね。今後の配信を待ちたいと思います。