『ピンク』インド映画女子おすすめ!ネタバレ感想

インド映画

この映画「ピンク」に描かれるのは、レイプ被害に遭った現代の若いインド女性たち。

自分自身の尊厳と人生をかけ、社会の理不尽さと戦い、訴えた女性たちの裁判の様子を描いた、2016年に制作公開された映画です。

女性にも、男性にも観てほしいな。

ということで、これ「ピンク」は誰が観てもいいんじゃないかな、というか観てほしいなと思うイチオシ映画です!


『ピンク』okome のヒトコト感想&勝手におすすめ度

        NOはNO 告発の行方 勇気を出して

    「勝手におすすめ度」★★★★☆




「ピンク」あらすじ

ミナール、ファラク、アンドレアの3人は、南デリーの小綺麗なアパートメントで共同生活を送っている3人。それぞれダンサーや事務員をして、つつましくも楽しく生きていた。

ある日遊びに行ったロックコンサートで、アンドレアの学生時代の友人ヴィシュワに偶然会い、その男友達仲間に紹介され、意気投合。

ディナーに誘われ、レストランで食事をした後、彼らのコテージに向かった3人。

その時、3人それぞれが別の場所に離され、レイプ被害に遭うが、抵抗したミナールが襲った男性ラジヴィールをガラスの瓶で殴り、大けがを負わせてしまう。

逃げ帰った3人は、「大ごとにしたくない。怪我をさせたことをまず謝ろう」というファラク、「警察に暴行されたと訴えにいこう」というアンドレア、「ラジヴィールには絶対謝りたくない」というミナールで意見が分かれていた。

が、加害者男性グループによる、拉致、マンションや働いている会社へのさまざまな嫌がらせや脅迫が起こり、マンション立ち退きや退職という事態になってしまう。

そして、自分たちを守るため一念発起、3人が彼らの暴行被害を訴えることにした矢先、加害者男性による「ミナールによるラジヴィールへの殺人未遂」「売春を断ったことによる暴行」などの訴えで、反対に逮捕、訴えられてしまう。

ラジヴィールは、政治家や警察にもコネがきく裕福な有力者の甥だった。

そんなとき、3人にアドバイスをくれる、謎の白髪の紳士が現れる。

彼の名は、ディーパク、引退した有名な弁護士だった。


「ピンク」見どころ、感想、ネタバレ!

「ピンク」訴えた3人の女性の勇気。#metoo

この映画で被害に遭ったのは、3人の現代女性。

サリーをまとわず、普段着はタンクトップに短パンといういで立ち。

タトゥーをし、男性と同じように会社で働く。

お酒を飲み、夜も出かける。

自宅で家族とともに暮らさず、自立して生活している。

日本なら、どこにでもいる普通の女性。

でも彼女たちは、インドでは普通の女性ではなく、殆どの男性たちに「軽く、適当に扱ってもいい女性」「売春婦と同じ」と見られていることがわかる。

なぜなら、尊重される伝統的な女性は、人前でお酒を飲んだり、夜間外に出かけないから。

つまり、「人前でお酒を飲むような女性は、自ら誘い、その後、性的な関係に陥ってもいいと思っている」と見なされているということ。

なんじゃ、それ。

現代インドです。

数十年前じゃない。2016年の作品。

アメリカで「告発の行方」が上映されたのは、1988年だったか。

衝撃でした。

取り調べも裁判の様子も、男性優位、女性の尊厳を大切にしようという気がさらさら見えなかった。

あれから数十年もたってるのに、根本的なことは全く変わってないんだなあ。

「お酒飲んで誘った」とか。「誘うような服装だった」とか。

自分の欲望を満たすことだけ、その後は保身に走る加害者男性たち。

想像力のかけらもない。

インドでは、低年齢の子どもたちも被害に遭う事件が多発。

子どもが誘うか、っての。

弱い立場の女性も同じ。

裁判では、個人的な経験もどんどんどんどんみんなの前で明かされていく。

晒される女性たちのなんと痛々しいことか。

それでも自分たちの主張を曲げず、たち続ける勇気。

よくレイプ裁判での被害者の2次被害が報道されますが、この映画ではそのことも問題提起されていると思いました。

この映画では、取り調べ調書を作った女性警察官が出てくるけど、縦社会であり男性優位の社会である警察組織の中で生きるために、彼女の偽証も苦渋の選択だったんだろうな、と推察します。

口に出せない想い。

裁判結審後、裁判所の行方を見守っていた職員の女性が、そっとディーパク弁護士に握手を求めるシーンが、個人的にすごく好き。

表立って味方になれない女性や人々がたくさんいる、と思う瞬間でした。


「ピンク」女性を守りたいという数々の名言。

権力。男性優位の社会。女性蔑視。社会的身分制度。慣習。腐敗。出身地。

さまざまな差別の構造。

それらと対峙し、戦う裁判。

「女性の安全マニュアル」と呼ぶディーパク弁護士の言葉は、どういう気持ちで聞くでしょうか。

・男性と二人きりで部屋に入ってはいけない。なぜなら、男性がOKだと思うから。

・笑いながら男性に触れてはいけない。なぜなら、男性がOKだと思うから。

・ミニスカートをはいてはいけない。なぜなら、男性がOKだと思うから。

・女性は男性とお酒を飲んではいけない。なぜなら、男性がOKだと思うから。

女性が「レイプされた」「殴ったのは正当防衛である」ということを訴えるには、こんなことから始めなければならない。

なんじゃそれ?です。

男性は、女性、というより一人の人間の気持ちを推し量れない、そんなに想像力がない生き物だったのか?と思いました。

でも果たして、インドではそうなのでしょうね。

インド女性の生きづらさが感じられました。

最後の弁論で、ディーパク弁護士が言った言葉。

「NOはNO。恋人でも知り合いでも友達でも夫婦でも、NOと言ったらNO。NOと相手に言われたら、止めるべきなんだ」。

そして、裁判官が言った言葉。

「この裁判が、新しい時代の幕開けとなるように」。

本当にそうだなと思いました。


「ピンク」ディーパク弁護士、アミターブ・バッチャン!

ディーパク弁護士役のアミターブ・バッチャン。

俳優でもあり、元政治家でもあり、インド映画界、芸能界のレジェンドです。

この映画、話の流れから、男尊女卑や身分制度、警察の腐敗の問題はわかってたけど、出身地で差別があることを初めて知りました。

アンドレアは、北東地域出身であることを相手の弁護士に執拗に言われる。

この出身地のくだり、別件で、実はアミターブ・バッチャンとちょっとしたつながりがあるんです。

「出身地の差別、なんだろうな」と調べてみたら、インドでは北東地域は「セブンシスターズ」と呼ばれ、東アジア系の顔立ちで人種的な偏見があるとのこと。デリーなどでヘイトクライムがたびたび起き、東北出身者が殴り殺される事件も起きているそうです。

アミターブ・バッチャンは、インド版ミリオネアの司会をしているんですが、CMで東北を話題にし差別をなくそう、と訴えていたとのこと。

そんなこともあって、東北出身の女性を主役の一人においたのでしょうか。

また、アミターブ・バッチャンは、女性の生理用品を作った「パッドマン」や女性が自立する映画「マダム・イン・ニューヨーク」などにも、出演しています。

出演時間は短いんですが、つい「この素敵なおじさんは誰だろう?」と調べてしまうくらい、威厳やオーラがありました。

芸能界でレジェンドで影響力のあるアミターブ・バッチャンは、意識してそういった社会的ヒューマニズム映画に出演しているのかな、と思います。

そう考えると、ますます素敵に思えてしまいます!

あと、アミターブ・バッチャンが、今年7月コロナで陽性になり入院ニュースが流れましたが、8月に退院したとのこと。

よかったですね。

これからもぜひ、いい映画に出演して、社会的に広めてもらいたい!と思います。

 

さて。

ディーパク弁護士、いい役なんですが、実はよくわからない謎があって。

体調悪そうだったけど、どこが悪かったのか?

何の薬を飲んでたのか?

3人をじっと見つめていたのはなぜ?

ゴキブリを見つめていたのはなぜ?

時々、会話にタイムラグがあるのはなぜ?

個人的には、数年前に弁護士引退したとのことだったので、様子から、もしや認知症的な物忘れを発症していたのか?と思ってしまいました。

あくまでも個人的な感想です。

だれか謎を解明してくれー。




最後に。「ピンク」ネットフリックスで見逃しなし!

「ピンク」は、アメリカで「告発の行方」というレイプに遭った女性が裁判を起こして戦う映画がありましたが、そのインド版な感じの映画です。

男女共同参画と男女平等とか一応総活躍とか、女性の力をと言われているけど。

そんなことを声高に言っても、なかなか破れないガラスの天井。

無言の圧力だったり、それまでの慣習だったり、気遣いのない言葉。

日本でも大きなうねりとなった#metoo。

日本でも、世界のあちこちでも起こってる、理不尽なこと。

「なんだかなぁ」と思う、小さなしこり。

「納得いかないなあ」と感じる、小さなささくれ。

「悔しい」と思いつつ、口に出せない傷。

その色々なことに対して私たちは、気持ちや体を対処させる。

目をつむり、蓋をし、「なかったこと」にする。

友人たちに話して、気を晴らす。

自分自身を慰め、労わる。

自分にも悪いところがあったと、自分を責める。

努力する部分があったと、自分自身が頑張る。

でも、悔しいよね。

理不尽に扱われた記憶は消えない。

頭の中の記憶は詳細さは徐々に薄れることがあっても、心に残った嫌な印象の記憶は一生消えない。

なんだろな、と思ったひと。

きっと口に出さないだけで、周りにもそんな気持ちを抱えた人はいるかもしれないよ。

「力関係」や「身分」が存在する限り、なくならない。

実は身近な問題。

真面目でした笑。

この映画は、実話が下敷きにある映画だそうです。

一朝一夕に、女性の社会的地位は変わらないと思いますが、少しでも悲しい事件が減りますように。

ということで、okomeおすすめ映画、★★★★4つです。

世界中の女性たちに幸あれ!!!

 


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